受賞者ニュース

Kraft Architects 中村篤史さん(H22大学院修了/古市研究室)German design award 2023 金賞受賞

2022年12月1日

創造工学基礎演習1,2の非常勤講師であり、卒業生の中村篤史先生(Kraft Architects http://www.kraft-architects.jp )が設計した「高山ホテル cup of tea ensemble」で German design award 2023 金賞を受賞しました。

https://www.german-design-award.com/en/the-winners/gallery/detail/44421-cup-of-tea-ensemble.html

中村篤史先生による作品解説(写真クレジット:Nishikawa Masao)
既にそこにある森林資源で組み上げた宿泊空間と地域文化の光景

本計画は年間約400万人が訪れる観光地として栄える飛騨高山にある小さなホテルの計画である。

元銀行の建物を素泊に特化したホテルとし、1階を宿泊者や地域に開かれたラウンジ、上階を客室として計画。「旅の体験を引立てる簡素な宿」をコンセプトに、ゲストのcup of tea(それぞれの好み)な旅と時間を提供する宿を目指した。

観光地としての次の100年を考える時、そこでの現在の暮らしや環境そのものが未来の遺産として価値を持って引き継がれるよう、地域の固有性のありかたを持続可能な方法で導き出したいと考えた。均質化した地域の固有性を再構築するために、地域を構成する既にそこにある森林資源で再構築することから着手した。以下に挙げる項目を「ミクロバナキュラー」と呼び、浮かび上がった必然性の断片を地域の固有性をもつ空間として再構築した。

・空きビルをリノベーションし地域の資産・風景・時間を継承

・短小径木の杉間伐材を、建具と家具材として建築化

・間伐の過程で出た細い枝を活用した照明を制作

・木材表面には岐阜県産の天然塗料の柿渋を使用

・広葉樹間伐材をスライスしてつくる天板を乗せるだけのダイニングテーブル

・製材時の端材でサイドテーブルを製作

・中古の家具をリペアして再利用

・伝統的な手すき和紙:山中和紙の在庫を買取り壁紙や障子紙に活用

豊かな森林に囲まれた観光地として、単なるホテルだけでなく「森と共に生きる」価値づくりの拠点として、年月を重ねて成熟する新たな地域文化の「光景」となることを願っている。