レクチャーシリーズ

2016年度レクチャ―シリーズ〜第3回:仙田満氏「人が集まる建築」

2016年9月21日

環境建築家・仙田満氏によるレクチャーは、昨年上梓されたばかりの新書『人が集まる建築環境 × デザイン × こどもの研究』(講談社、2016年)をテーマに、これまでの研究と作品を辿る大変興味深い内容であった。仙田氏は、こどものための遊具デザインに取り組んだ先駆的建築家である。建築と違い、遊具は「良い/悪い、人気がある/ない」が非常に明確に表れる。こどもはとても素直に、楽しくない遊具では遊ばないのである。デザイナーはその評価に晒される。そして考える。「良い遊具とは何か?」「良い遊具の条件は?」と。そのために、でき上がった遊具の使われ方を観察し、分析してみる。するといろんなことが見えてくる。単に人気が「ある/ない」の先に、すぐに飽きられる遊具、遊び方が変化、発展していく遊具があることも分かる。そして、そこには「構造がある」ことを発見した。仙田氏は、それを「遊環構造」と名づけたのである。「環」には円環状であることと、環境的であることの意味が込められている。つまり遊具というオブジェクトを超えて、広がりを持った環境のなかの「関係性」が重要な鍵なのだと考えた。遊具という対象を超えて、建築あるいは環境デザインのための原理に敷衍できる構造を発見したのである。このような話の展開から、紹介される作品も、遊具、児童公園、児童館から大学図書館や野球場へと、規模・用途はより広がりを見せていく。それらが「遊環構造」を持つという一貫性のもとに示されることで、理論と実践の強いつながりが実感できた。作品は、とくに「マツダスタジアム」(2009年)のすばらしさに圧倒された。閉じてしまいがちな球場が遊環構造によって街に開かれ、つながっている。そこに数万の人びとが集まり、ひとつになる。小さな遊具の探求から始まり、このような展開として現実化した風景が感動的である。建築家各々が自分独自のテーマを持つことの大切さ、実践と研究がデザイン行為の両輪であること。これらを強く胸に刻むことができたレクチャーであった。(石原健也)


仙田満(せんだ・みつる)1941年神奈川県生まれ。東京工業大学工学部建築学科卒業後、64年菊竹清訓建築設計事務所入所。68年環境デザイン研究所設立。琉球大学、名古屋工業大学、東京工業大学で教授として教鞭を執ったほか、2001-03年日本建築学会会長、04年こども環境学会の会長、06年日本建築家協会会長も務める。