小橋 知季准教授
鉄骨構造、合成構造、座屈
鋼は、材料の比強度が高く加工性も良い材料であり、建材として幅広い用途で活用されています。一方、鋼を用いた構造部材(鉄骨部材)では、急激な支持力低下を誘起する座屈発生や、複雑な変形挙動による剛性の不足等が課題となる場合が多くあります。本研究室では、鉄骨部材に外力(地震等によって生じる力)が作用した際の力学的挙動の解明や、合理的な設計手法の構築などに取り組んでいます。

薄板軽量形鋼の座屈性能の評価
薄板軽量形鋼(うすいたけいりょうかたこう)は、厚さ2.3mm未満の薄い鋼板を折り曲げて作られる軽量な鉄骨部材です。主に建物の屋根や壁の下地、低層建物の柱や梁等に利用されています。
とても軽いのが特長ですが、変形しやすく、力がかかると複雑な座屈挙動(※)を示すという課題があります。本研究室では、薄板軽量形鋼に外力が加わったときに、どのように変形が生じて破壊に至るかを、実験や数値解析を通じて明らかにする研究に取組んでいます。
(※座屈:部材が突然おおきくたわみ、荷重を支持する能力を失う現象。)

鉄骨部材の新しい形状の探索
鋼は冷間成形(※)によって、様々な断面形状を作ることができます。本研究室では、従来から存在する鉄骨部材の形状にとらわれない、新しい鉄骨部材の形状探索にも取り組んでいます。図は、正方形断面の薄肉鋼管を八角形断面化することに取り組んだ事例です。板厚と外形が同じ正方形の断面を八角形にすることで、その耐力が1.66倍になり、重量は0.88倍になる事を実験と解析から明らかにしています。
(※冷間成形:鋼板を常温で折り曲げること)

薄鋼板とコンクリートを用いた合成構造に関する研究
建物の構造では、それぞれの素材の特性を活かした工夫がされています。たとえば、引っぱる力に強い鋼と、押される力に強いコンクリートを、それぞれに適した場所に使い分けることで、効率的で丈夫な構造を実現することができます。このように、異なる素材の組み合わせで構成される構造を合成構造といいます。本研究室では、薄鋼板とコンクリートを組み合わせた合成構造について、主に部材の耐力、剛性、変形性能などの力学的特性を実験や数値解析を通じて明らかにする研究に取組んでいます。
